【この記事でわかること】
「飛行機に乗ったら耳が痛くなって、なかなか治らない」「風邪をひいてから耳がこもった感じが続いている」「病院で『耳に水が溜まっている』と言われた」
こうした経験をお持ちの方はいませんか?
実は、こうした症状の多くは耳管(じかん)という小さな管の機能低下が原因です。この記事では、耳の詰まり感・難聴・耳鳴りに悩む方に向けて、その原因とメカニズム、そして治療法である「耳管通気療法」について、耳鼻咽喉科専門医がわかりやすく解説します。
「耳が詰まる」「聞こえにくい」よくある症状の意外な原因とは?
「耳に水が入ったわけでもないのに、耳がこもる」
「最近、テレビのボリュームを上げないと聞き取れない」
「耳鳴りがして、なんとなくぼんやりした聞こえ方が続く」
これらは単なる“疲れ“や“加齢のせい“ではなく、耳管の機能が低下しているサインである可能性があります。耳管の不調は、乳幼児から中高年・高齢者まで幅広い年代に起こり得るにもかかわらず、痛みや発熱を伴わないことも多いため、見過ごされがちです。
そもそも「耳管」とは何?その役割を知っておこう
耳管とは、鼓膜の奥(中耳)と鼻の奥(上咽頭)をつなぐ細い管のことです。普段は閉じており、あくびをしたり、ものを飲み込んだりするときに一瞬だけ開いて、中耳の気圧を外の気圧と等しく調整する「圧平衡」の働きをしています。
高い山に登ったときや飛行機に乗ったとき、耳が「キーン」と詰まった経験はありませんか?これは気圧が変化したときに耳管がうまく開かず、中耳の気圧と外気圧のバランスが崩れた状態です。通常は唾を飲んだり、あくびをすることで元に戻りますが、耳管の機能が低下していると、この“耳抜き“がうまくできなくなってしまいます。
耳管の機能が低下するとどうなるの?
耳管の機能が低下すると、以下のような症状が現れます。
- ●耳閉感(耳の詰まり感):耳がふさがったような、こもった感じが続く
- ●難聴(聞こえにくさ):音がくぐもって聞こえる、音量が小さく感じる
- ●耳鳴り:「ゴー」「ジー」といった音が聞こえる
- ●自声強聴(じせいきょうちょう):自分の声や呼吸音が異常に大きく響く
- ●めまい・頭痛・肩こり:耳の不調が全身の不快感につながることがある
これらの症状は、放置すると滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)や、より重い耳の病気へと進展するリスクがあります。
「滲出性中耳炎」って何?痛くない中耳炎に要注意
中耳炎というと「耳が痛い」「熱が出る」というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。しかし、滲出性中耳炎は痛みも発熱もない“静かな中耳炎“です。
耳管の機能が低下して中耳が陰圧(外気圧より低い状態)になると、体液(滲出液)が少しずつ中耳に滲み出してきて溜まっていきます。医師がよく「耳に水が溜まっている」と表現するのがこの状態です。シャワーや水泳で外から水が入ったわけではなく、体の内側から液体が滲み出してくるのです。
こんな方は滲出性中耳炎に要注意!
- ●風邪をひいてから耳の調子が戻らない方
- ●中高年・高齢者で「最近耳が遠くなった」と感じる方
- ●お子さまが「テレビの音を大きくしたがる」「呼んでも気づかないことが多い」
- ●鼻炎・副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎を繰り返している方
- ●飛行機搭乗後から耳の不調が続いている方
特にお子さまの滲出性中耳炎は、就学期の難聴の主要な原因の一つです。授業の内容が聞き取りにくくなり、学習や日常生活に影響が出ることもあります。「なんとなく反応が鈍い」と感じたら、早めに耳鼻科を受診することをお勧めします。
「耳管通気療法」とはどんな治療?
耳管の機能低下・耳管狭窄症・滲出性中耳炎に対して行われる治療が、耳管通気療法(じかんつうきりょうほう)です。
耳管通気療法とは、専用の器具(耳管カテーテルまたはポリッツェル球)を使って鼻から空気を送り込み、耳管を通じて中耳へ換気を行う治療法です。これにより、
- ●中耳内の陰圧を解消する
- ●溜まった滲出液(水)を排出しやすい状態にする
- ●中耳粘膜の正常化を促す
という効果が期待できます。
治療直後に「耳がスッキリした」「聞こえやすくなった」と感じる方が多く、耳閉感や難聴の即時的な改善が実感できることも少なくありません。
耳管通気療法はどのように行うの?痛みはある?
大人の場合は、細長い金属製の管(耳管カテーテル)を鼻の穴の奥の耳管開口部に当てて空気を送り込みます。お子さまの場合は、よりやさしい器具(ポリッツェル球)を使って処置を行います。
鼻腔の状態や個人差によって感じ方は異なりますが、麻酔は基本的に不要で、処置自体は短時間で終わります。経験豊富な医師が丁寧に行うことで、患者さんへの身体的・心理的な負担を最小限に抑えることができます。
「以前に別の病院で受けたが、痛くて怖かった」という方もいらっしゃいますが、施術者の経験・技術によって感じ方は大きく変わります。痛みや強い違和感がある場合はすぐにお申し出ください。
▼通院の頻度と期間の目安
| 対象 | 通院頻度の目安 | 治療機関の目安 |
| 成人(耳管狭窄症・滲出性中耳炎) | 週1〜2回 | 数週間〜数ヶ月 |
| お子さま(滲出性中耳炎) | 週1〜2回 | 症状・経過による |
| 飛行機搭乗前の予防 | 週1回 | 搭乗1ヶ月前から |
耳管機能の回復には個人差があり、一度の通気で完治するわけではありません。原因となっている鼻炎・副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎などの治療を並行して行うことが、耳管機能の回復を促す上でとても重要です。
▼治療の流れ
1.問診・検査(聴力検査・ティンパノメトリー・耳管機能検査など)
2.診断と治療方針の確認(耳管通気が適切かどうかを判断)
3.鼻・咽頭の炎症がある場合は並行して治療
4.耳管通気の処置(定期的に繰り返す)
5.経過観察・再検査(改善度合いを確認しながら通院頻度を調整)
耳管通気療法で改善しない場合は?
一定期間の通気療法を行っても改善が見られない場合や、中耳に大量の液体が貯留している場合には、次のステップの治療をご提案することがあります。
- 鼓膜切開術(こまくせっかいじゅつ)
- 鼓膜をわずかに切開して、溜まった液体を排出する処置です。鼓膜の表面を麻酔するため、痛みはほとんどありません。切開した鼓膜は通常1〜2週間で自然に塞がります。
- 鼓膜換気チューブ留置術(こまくかんきチューブりゅうちじゅつ)
- 鼓膜切開を繰り返しても液体が再び溜まる場合に、鼓膜にシリコン製の小さなチューブを留置して、中耳の換気を持続的に確保する手術です。お子さまの場合は病院へのご紹介、大人の場合は局所麻酔のもとで対応可能です。
まとめ
耳の詰まり感・聞こえにくさ・耳鳴りが続いているのに「特に異常はない」と言われた方、それは耳管の機能低下が原因かもしれません。
以下に当てはまる方は、耳鼻咽喉科への受診をお勧めします。
- ●耳がこもった感じ・詰まった感じが1週間以上続いている
- ●風邪をひいてから耳の調子が戻らない
- ●「耳に水が溜まっている」と言われたことがある
- ●飛行機や登山のあとから耳の不調が続いている
- ●テレビの音が大きくないと聞き取れなくなってきた(ご自身・お子さま)
- ●自分の声が頭の中で響くように感じる
また、以下の症状がある場合は早めの受診が必要です。放置せずにご相談ください。
- ●めまいが繰り返す、または強くなっている
- ●突然、片方の耳が全く聞こえなくなった(突発性難聴の疑い)
- ●耳から液体や血液が出ている
耳管通気療法は、正しい診断と経験ある医師による丁寧な処置によって、多くの患者さんに「耳がスッキリした」という改善をもたらしてきた治療法です。「おかしいな」と感じたら、ぜひ姫路市飾磨区のうおずみ耳鼻咽喉科へお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
飛行機に乗ると毎回耳が痛くなります。予防できますか?
搭乗1ヶ月前を目安に受診していただき、鼻咽腔ファイバースコープ等で耳管咽頭口の状態を確認します。状態に応じて通気処置や鼻炎の治療等をご提案いたします。その結果、耳管機能が改善すれば、搭乗時の痛みや不快感を抑えることが期待できます。
耳管通気はすべての耳鼻科で受けられますか?
耳管通気療法は、実施している医療機関が限られています。「近くのクリニックでは対応していなかった」という方も、ぜひうおずみ耳鼻咽喉科へご相談ください。
耳管通気と薬の治療はどちらが効果的ですか?
どちらか一方ではなく、薬による鼻や咽頭の炎症治療と耳管通気を組み合わせることが最も効果的です。原因となる炎症を抑えながら、耳管の換気を促すことで、中耳粘膜の正常化を目指します。




