【この記事でわかること】
「耳がかゆくて、かいてもかいても治らない」「耳に水が詰まったような感じが続いている」「耳かきをしたら綿棒に黒いものがついた」
そんな経験はありませんか?
実は、耳の中にも「カビ(真菌)」が繁殖することがあります。これを「外耳道真菌症」といいます。一般的な外耳炎(細菌性)と症状が似ているため、「なかなか治らない外耳炎」として見過ごされているケースも少なくありません。この記事では、外耳道真菌症の原因・症状・診断・治療法・日常生活での注意点について、耳鼻咽喉科専門医がわかりやすく解説します。
耳の中にカビ「外耳道真菌症」とはどんな病気?
外耳道真菌症とは、耳の入口から鼓膜までのトンネル(外耳道)に真菌=カビが繁殖することで起こる感染症です。「カビが生えるなんて、よほど免疫が落ちている人だけでは?」と思われるかもしれませんが、意外にも健康な成人が罹ることも多く、誰にでも起こりえる病気です。
外耳炎には大きく分けて2種類あります。
| 細菌性外耳炎 | 外耳道真菌症 | |
| 原因 | 細菌(ブドウ球菌など) | 真菌(カビ):カンジダ・アスペルギルスなど |
| 主な症状 | 耳の痛み・耳だれ・かゆみ | 強いかゆみ・耳だれ・耳閉感(耳の閉塞感)・難聴 |
| 特徴 | 比較的急性に発症 | かゆみが特に強い。治りにくく再発しやすい |
| 治療薬 | 抗菌薬(抗生剤) | 抗真菌薬(抗生剤は効かない) |
この2つは使う薬がまったく異なります。そのため、正確な診断がとても重要です。
なぜ耳の中にカビが生えるの?意外な「原因」とは
カビ(真菌)は空気中に浮遊していたり、もともと皮膚の常在菌として存在しています。通常は皮膚のバリア機能によって守られているため問題になりませんが、外耳道の環境が乱れると一気に繁殖します。
外耳道真菌症が起こりやすい主な状況は以下の通りです。
- ●耳かき・耳掃除のしすぎ(繰り返すことで皮膚が薄くなり、バリア機能が低下する)
- ●湿気・蒸れ(汗・入浴後の水分・水泳など)
- ●補聴器・イヤホンの長時間使用(外耳道内が蒸れやすくなる)
- ●細菌性外耳炎の治療中・治療後(細菌感染で荒れた外耳道に真菌が繁殖しやすくなる)
- ●ステロイド軟膏の長期反復使用(皮膚の免疫機能が低下する)
特に「耳かきが習慣になっている方」「なかなか治らない外耳炎を繰り返している方」は注意が必要です。耳かきをすればするほど外耳道の皮膚が傷つき、真菌が増殖しやすい環境が整ってしまうという悪循環に陥りがちです。
どんな症状が出る?「耳のかゆみ」以外にも要注意
外耳道真菌症の主な症状は以下の通りです。
- ●耳の強いかゆみ(特に強いかゆみが特徴的)
- ●耳の痛み(急に激しく起こることがある)
- ●耳だれ(分泌物)
- ●耳のつまった感じ・閉塞感
- ●聞こえにくさ(難聴)
- ●耳鳴り
症状だけで見ると、一般的な細菌性外耳炎とほとんど区別がつかないのが外耳道真菌症の厄介なところです。
ただし、自宅でご自身が気づける手がかりが一つあります。
「耳かきや綿棒に、墨のような黒いものがついたら要注意!」
これはアスペルギルスというカビが原因の場合に見られる特徴的なサインです。黒いつぶつぶした胞子が外耳道に繁殖している状態で、このようなときは早めに耳鼻科を受診してください。
一方、カンジダが原因の場合は白くべたっとした分泌物が見られ、鼓膜の近くに付着していることが多いです。カンジダは処置が難しい場所に繁殖しやすく、治療が長引く傾向があります。
どうやって診断するの?耳鼻科での検査について
外耳道真菌症の診断は、耳鼻咽喉科での顕微鏡を用いた診察によって行います。専門医が直接耳の中を観察することで、真菌特有の所見(胞子・菌糸など)を確認して診断します。
より確実な診断には、耳の中を綿棒でぬぐって培養検査(菌を育てて種類を調べる検査)を行います。結果が出るまでには通常7〜10日程度かかります。
重要なのは、「なかなか治らない外耳炎」を自己判断で市販薬や抗生剤で対処し続けることの危険性です。外耳道真菌症には抗生剤は効きません。むしろ菌のバランスが乱れてカビがさらに繁殖しやすくなることもあります。症状が長引く場合は必ず耳鼻咽喉科を受診しましょう。
治療はどうやって行うの?クリニックでの処置の流れ
外耳道真菌症の治療は、耳鼻咽喉科でのていねいな処置が中心となります。
1.耳の清掃・真菌塊の除去
顕微鏡下に外耳道を丁寧に清掃し、繁殖した真菌の塊を取り除きます。特に鼓膜表面に真菌が付着している場合、この処置だけで痛みが大幅に和らぐことがあります。
2.耳洗浄
専用の器具を使い、体温に近い生理食塩水で耳の中を洗浄します。真菌や汚れをきれいに洗い流します。
3.抗真菌薬の塗布・点耳
洗浄後に抗真菌薬の軟膏を外耳道に丁寧に塗布します。場合によっては点耳(耳浴)を行います。
4.通院・経過観察
外耳道真菌症は再発しやすいため、症状が改善した後もしばらく通院して経過をみることが大切です。皮膚のバリア機能が回復するまでには時間がかかるため、頻回の通院が必要になることもあります。
治療中・日常生活での「やってはいけないこと」
外耳道真菌症を早く治すために、以下の点を必ず守ってください。
- 1.耳かき・耳触りを絶対にしない(新たな傷をつくり、カビの繁殖を助けてしまう)
- 2.補聴器・イヤホンの使用を控え、使う場合は清潔を保つ
- 3.治療途中に自己判断で通院をやめない(少しでもカビが残っていると数日で再増殖する)
「かゆいのを我慢するのが一番つらい」という声をよく聞きますが、かけばかくほど治りが遅くなります。かゆみがつらい場合は医師に相談し、抗アレルギー薬の内服などを検討してもらいましょう。
まとめ
耳のかゆみ・閉塞感・難聴感が続いているとき、それは「外耳道真菌症」のサインかもしれません。
以下に当てはまる方は、耳鼻咽喉科への受診をおすすめします。
- ●耳のかゆみが強く、なかなか治らない
- ●耳に水が詰まったような感じが続いている
- ●耳かきや綿棒に黒いものがついた
- ●「外耳炎」の治療をしているのに改善しない
- ●耳かきが習慣になっている
- ●補聴器・イヤホンを長時間使っている
外耳道真菌症は、正しい診断と適切な処置を行えば、きちんと治すことができる病気です。自己処置だけでは治りにくく、再発しやすいため、早めに専門医にご相談ください。
「おかしいな」と感じたら、姫路市飾磨区のうおずみ耳鼻咽喉科までお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
耳のかゆみがずっと続いています。市販の耳の薬を使っても治りません。外耳道真菌症の可能性はありますか?
可能性はあります。市販の耳の薬には抗菌薬(細菌に効く成分)が含まれているものが多いですが、外耳道真菌症の原因はカビ(真菌)です。抗菌薬はカビには効かないため、使い続けても症状が改善しないばかりか、悪化することもあります。
「市販薬を試しても治らない耳のかゆみ」は、外耳道真菌症のサインの一つです。自己判断での対処はここまでにして、早めに耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。
耳かきをしたら綿棒に黒いものがつきました。これはカビですか?
黒い分泌物は、アスペルギルスというカビが繁殖しているサインである可能性があります。アスペルギルスは黒い胞子を形成する真菌で、外耳道真菌症の原因菌として最も多いものの一つです。
ただし、耳垢や汚れが黒く見えることもあるため、自己判断は禁物です。一度耳鼻咽喉科で顕微鏡を使って確認してもらいましょう。
痛みはなく、かゆみだけです。それでも受診した方がいいですか?
はい、受診をお勧めします。外耳道真菌症は初期には痛みがなく、かゆみだけが続くことが多い病気です。しかし放置すると、鼓膜にまでカビが広がり、鼓膜炎や難聴を引き起こすことがあります。
「かゆいだけだから大丈夫」と思わずに、症状が長引く場合は早めにご相談ください。
子どもでも外耳道真菌症になりますか?
なります。ただし、外耳道真菌症は成人・高齢者に多い傾向があります。子どもの耳のかゆみや耳だれは、細菌性外耳炎や中耳炎が原因であることが多いですが、可能性を否定することはできません。お子さんの耳の症状が続く場合も、遠慮なくご相談ください。
治療中に耳が痛くなってきました。なぜですか?
治療の過程で一時的に炎症が強くなることがあります。また、処置の際に外耳道の粘膜が刺激されて痛みが出ることもあります。痛みが強い場合や発熱を伴う場合は、速やかに受診してお伝えください。自己判断で治療を中断したり市販の痛み止めだけで様子を見たりするのは避けてください。
完治しましたが、また同じ症状が出てきました。なぜ再発するのですか?
外耳道真菌症は再発しやすい病気です。主な理由は以下の通りです。
- ●治療が不完全なまま終了してしまった
- ●耳かきの習慣が続いている(皮膚バリアが回復しない)
- ●補聴器・イヤホンの使用による湿潤環境が続いている
- ●免疫力の低下
再発した場合も、早めに受診して処置を受けることが大切です。また、日常生活での予防習慣を見直すことが再発防止の鍵になります。
外耳道真菌症の治療中に入浴はしていいですか?
入浴は問題ありません。ただし、耳に水が入らないよう注意してください。シャワーを浴びる際は耳に直接かからないようにお気を付けいただくことを推奨します。
外耳道真菌症の治療中は耳かきはどうすればいいですか?完全にやめないといけませんか?
治療中は耳かきを完全に控えてください。耳かきによる微細な傷がカビの増殖を助けてしまいます。
完治後も、「習慣的な耳かき」は見直しをお勧めします。耳垢は本来、外耳道の自浄作用で自然に外側へ排出されるようになっています。必要以上の耳掃除は外耳道の皮膚を傷つけ、外耳道真菌症の再発リスクを高めます。
どうしても気になる場合は、耳鼻科で定期的に耳掃除をしてもらうのが最も安全です。
外耳道真菌症の治療中もイヤホンや補聴器は使い続けてもいいですか?
治療中は使用を控えることが理想的です。どうしても必要な場合は、使用後は取り扱い説明書に従って清潔な状態を保ち、乾燥した状態で保管してください。外耳道内が蒸れた状態が続くと、カビが再増殖しやすくなります。
また、耳の中に入れない骨導イヤホンを使用することもご検討ください。
補聴器をお使いの方は、定期的に補聴器店でのメンテナンスも合わせて行うことをお勧めします。
外耳道真菌症は人にうつりますか?
通常の日常生活(会話・握手・同じ空間にいるなど)ではうつりません。真菌は空気中や皮膚の常在菌としてもともと存在しており、外耳道の環境が乱れた人に繁殖するものです。
なお、同じ耳かきを家族で使い回すことで、外耳道の皮膚バリアが低下している人へ菌が移行するリスクがゼロではありませんので、ご注意ください。




